“ 山恵錦 ”
( さんけいにしき )

〜 試験栽培&醸造から始まる酒米の物語 〜


長野県酒造組合では、長野県農業試験場の行う酒米の選抜に
早い段階から参加する事になり、
その初年度から弊社もその選抜に参加する事に致しました。

それは、酒米で普通だと思っていたことに、
改めて取り組む事でもありました。



【 2013年 】

3月 複数(3系統ほど)の新規酒米について、情報や意見交換が始まり、
弊社では、栽培特性、精米特性、品種系統などから
「信交酒545号」(後の山恵錦)の試験栽培と醸造を希望致しました。

4月 作付けを検討している地元 信濃町荒瀬原の
契約栽培農家に試験栽培のご相談をさせて頂きました。

(後に試験醸造の為、初期から継続して
試験栽培が行われたのは、荒瀬原と他に1地区だけでした。)


そして、新しい酒米を検討し始めると、
素朴ですが大切な事の再確認を幾つかする事になりました。

『 試験醸造された日本酒は、純米酒と表示できるのか? 』

『 “酒造好適米” と表示できるのか? 』

そして、

『 山田錦を超えるような優れた酒米は、どの様な特性が必要か? 』


なお、この年の契約栽培の作柄は、9月下旬に大型台風が通過し、
酒米が倒伏した年になりましたが、
上々の作柄になりました。



【 2014年 】

新しい各品種の麹試験が「長野県工業技術総合センター」で行われ、
それぞれ良好な評価で品種の選抜継続が決定しました。



【 2015年 】

新しい酒米(後の山恵錦)が、地元 荒瀬原 地区で試験栽培され、
弊社にて試験醸造が行われました。

なお、新しい酒米が品種登録されるには、
長野県の現在の奨励品種
(美山錦、金紋錦、ひとごこち、しらかば錦)に
代わる品種である事が前提との事でしたが、
それを実証する事の難しさに直面し、
品種登録されない事も覚悟しないといけない状況でした。

※ この時の経緯もあり試験醸造を行う際、
2022年頃から品種登録を先行する様になってきています。

また、新しい品種にて大吟醸(精米歩合 40% 程度)での
試験醸造を行う事となりました。



【 2016年 】

春 新しい各酒米品種を、
精米歩合 40%程度にして試験醸造した日本酒の品質評価が行われました。

(弊社では、精米歩合 39%の「信交酒545号(山恵錦)」の純米大吟醸を試験醸造。)

この時点では、まだどの様な酒米を選抜するか意見が分かれ、
否定的なご意見もあり品種登録の見込みが付かない状況でした。

また、『 「 信交酒545号(山恵錦)」は、
山田錦にない優れた栽培特性があり、
更に、精米時の砕米率、麹試験、溶解性なども良好で、
今までにない品種特性は、
欠点でなく醸造方法の工夫で改善出来る 』 と、
関係者に品種登録を強くお願い致しましたが、

『 それ程、良いと思われるなら、高橋さんがご自分でおやり下さい 』 と、
あくまでも自己責任でとのお話しを強く頂き、
4月頃は、品種登録の可能性がまったく無い状況にありました。

紆余曲折ありましたが、
その後、関係団体のご努力があり奇跡的に意見がまとまり、
「信交酒545号(山恵錦)」を品種登録する事に決定。

2016/09/20 「信交酒545号」品種名の公募開始。

2016/12/14 品種登録出願



【 2017年 】

3月 23日 品種登録出願 公表

5月 信州大学工学部のご協力により
「信交酒545号」(後の山恵錦)は、
栽培条件により「山田錦」の様な溶解性を示す
科学的な検証報告を頂き、
地元 信濃町に適している品種である事が分かってきました。

12月 関東農政局の審議会に出席させて頂き、
「信交酒545号(山恵錦)」の栽培状況などを説明致しました。



【 2018年 】

この年の4月より 「信交酒545号(山恵錦)」と表示した日本酒が、
初めて出品や販売が可能になり、
例年に無く遅い搬入締切だった事が幸いし、
4月1日、「信交酒545号(山恵錦)」として全国新酒鑑評会に出品。

おかげさまで全国新酒鑑評会にて、
地元 信濃町産 山恵錦 100% の 純米大吟醸で


その後、「信交酒545号(山恵錦)」を100%使用した弊社の「純米大吟醸」が、
全国新酒鑑評会、関東信越国税局、長野県の各鑑評会などで、
金賞、優秀賞、知事賞など国内の三冠を受賞。

2018酒造年度は、
6月、7月に高温小雨の異常気象により酒米の溶解性が低い傾向になりました。



【 2019年 】

KURA MASTER にて弊社 純米吟醸「斑尾」が「プラチナ賞」を受賞。

6月から7月中旬まで 日照不足(曇り、小雨の日が多い)

最終的な品種登録にならない為、
「信交酒545号(山恵錦)」と品種表示することが必要。



【 2020年 】

3月30日 品種登録 完了。

2013年に検討を始めてから8年目の春に
ようやく 「 山恵錦 」 とのみ表示出来る様になりました。

5月20日 信濃町で契約栽培の山恵錦の田植えが行われました。
(3月 温暖、4月 冷え込み、5月 肌寒い日 多)


2020酒造年度は、山恵錦 100% にて日本酒を醸造。
※ 普通アル添、純米、純米吟醸、純米大吟醸を醸造



【 2021年 】

7月頃から高温傾向でしたが、
8月中旬から気温が下がり、
9月中旬には生育が少し遅れ気味になりました。

酒米の溶解は、比較的順調でした。


2021酒造年度は、二年連続 山恵錦 100% にて日本酒を醸造。
※ 純米、純米吟醸、純米大吟醸のみを醸造
※ 甘酒のみ一部に 長野県産 美山錦 を使用。



【 2022年 】

2021酒造年度 山恵錦(信州長野 信濃町産 100%)の純米大吟醸が、
全国新酒鑑評会 金賞、長野県 知事賞、関東信越国税局 優秀賞 の二度目の三冠 受賞。

2021年12月から翌年2月にかけ積雪が多く雪片付け、雪下ろしに追われました。

5月 昼夜の寒暖差 15度前後の日もあり。
6月 雨量少なく梅雨が短期。
6月下旬には、最高気温 32度を記録し夜間も暑い日が多い。
7月上旬、最高気温 28度前後、最低気温 18度前後で過ごしやすい傾向。
8月 最高気温 30度を越える日が多い。
9月 台風14号により一部倒伏が見られるが、等級検査は良好。

2022酒造年度は、
三年連続で地元 信濃町&戸隠 産 山恵錦 100% にて日本酒を醸造。
※ 純米吟醸、純米大吟醸のみを醸造



【 2023年 】

全国新酒鑑評会(2022酒造年度)は、
地元 信濃町産 山恵錦 100% にて三年連続で金賞を受賞。